「新卒の時は、ガチで飲み会だけは参加しとけよ。」
そう言ったのは、
当時一番シゴデキの先輩だった。
「え、仕事に関係あります?」
当時の自分は尖ってたのもあり、
言い返した。
「飲み会なんて、
ただの時間の無駄じゃないですか?」
先輩はちょっとだけ笑って言った。
「今は、
分からんでええ。でも後で効く」
当時はたまに飲み会に行っても、
「若いんやからもっと飲め」
「彼女おるん?」
「最近の若い子はさ〜」
内心、
(早く帰りたい…)
って思いながらも、
とりあえず席に座ってた。
ある日、
業務でトラブルが起きた。
マニュアルを見ても分からない。
周りは全員忙しそう。
一人固まってたら、
課長が通りがかって言った。
「それ、アイツが詳しいで」
「え、あの別部署の…?」
普段ほとんど話さない人。
でも思い出した。
この前の飲み会で、
たまたま隣の席になって、
「野球好きなん?」
「どこのファンなん?」
そんな他愛ない話をした人だった。
ダメ元でチャットした。
「すみません、
今ちょっとお時間いいですか?」
すぐ返事が来た。
「ええよ。
あー、それな。
たぶんここが原因やで」
5分で解決した。
「助かりました…!」
って言うと、
「ええって。
同じ阪神ファンやろ」
その後も似た場面が続いた。
困った時に、
「誰に聞けばいいか」
が自然に浮かぶ。
それだけで、
仕事は一気に楽になる。
数年後、
あの先輩にぽろっと言った。
「あの時の飲み会の話、
今なら分かります」
先輩は笑って言った。
「やろ?
飲み会はな、仲良くなる場所じゃないんよ」
「助けを呼べる関係を、
先に作っとく場やで」
今ならはっきり言える。
新卒の飲み会は、
社交じゃない。
仕事の保険みたいなもの。
あの時、
先輩はそれを教えようとしてた。

